コラム

森の住人たち     ~ 生きもとの出会い ~



「森の住人たち」は、
” 相生山緑地オアシスの森くらぶニュースレター ” に 
 近藤 記巳子が連載しているコラムです。


№.40 ヨコヅナサシガメ
№.39 シモフリスズメガ
№.38 アオマダラタマムシ
№.37   シジュカラ
№.36 ヤマトタマムシ
№.35 ヒメボタルかるた
№.34 キムネクマバチ
№.33 ベニカミキリ
№.32 陸貝
№.31 アオスジアゲハ
№.30 シロシタホタルガ
№.29 ジョウビタキ  
№.28 アヅチグモ  
№.27 アワフキムシ
№.26 カマキリ
№.25 オオカマキリ
№.24 イセノナミマイマイ
№.23 クロコノマチョウ
№.22 
№.21 アサギマダラ その4
№.20 シロスジカミキリ
№.19 アサギマダラ その3
№.18 アサギマダラ その2 
№.17   ヨタカ
№.16 ウソ
№.15 ナガサキアゲハ
№.14 ヒヨドリ
№.13 メジロ
№.12 モズ
№.11 ケラ
№.10 カケス
№.9   カネタタキ
№.8
№.7
№.6
№.5  アサギマダラ
№.4
№.3
№.2
№.1



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№40  

~ ヨコヅナサシガメ ~


ヨコヅナサシガメ(横綱刺亀)
サシガメ科体長 16~24㎜
分布 本州・四国・九州
出現期 4~10月
食性 毛虫などの昆虫やクモ類

 

昨年、4月の観察会のことである。
コナラの幹の様子がいつもと違った。

ぽつぽつと赤いものが見える。
近寄るとそれは、動いていた、ゆっくりと。

 「みなさん、きょうは、とってもラッキーです!」
参加者の方は、状況を把握できずにきょとんとしている。
「実は、ヨコヅナサシガメが脱皮しています!

ほら、ここ。 近づいて観てください」
「本当!それにしても、すごい数だね。」
「いや~、すごい偶然。ゆっくりだけど、確実に変化している!」
「黒と赤のコントラストがきれいね~」

 それは、集団で冬越しをした幼虫が、羽化して成虫になる、まさにその真っ只中。すでに羽化を終えた成虫は、真っ赤な色をしている。やがて黒色に変わる。ドラマチックな出会い!

ヨコヅナサシガメ(横綱刺亀)は、光沢のある黒色をし、

腹部側面が広く張り出して、
その張り出した部分が黒と白の縞模様になっていて
横綱の綱や化粧まわしに見立てられる。
また、口吻を他の昆虫に刺し、カメムシの仲間であることから、「刺し亀」といわれる。

 食は、肉食系。昆虫やクモ類をとらえ、

細長い口吻を突き刺して体液を吸う。
不用意に触れると、この口吻で人を刺すこともあり、
激痛に襲われるのでくれぐれも注意を。

 相生山緑地は、訪れるたびに、

新たな出会いと、新たな発見がある。さ
て、今年はどんな出会いが待っているのだろう。








 

№39   ~ シモフリスズメガ(幼虫) ~


シモフリスズメガ(霜降天蛾、霜降雀蛾)スズメガ科
体長   終齢幼虫:9cm
分布   本州~沖縄県
出現期  初夏~秋
食草   ゴマ、クサギ、ネズミモチ、キリなど


 
「あ、イモムシがいるよ~」
「おっき~ね~」
子どもたちの話声が後方から聞こえてくる。ふりむけばクサギの木を見上げている女の子がふたり。
小学3~4年生だろうか。
「こんにちは。どんな虫がいるのかな~」
「ここにいるよ」とクサギの葉裏を指さす。そこには、大人の親指位の太さで9㎝大のシモフリスズメガがいた。ムシャ、ムシャ、勢いよくクサギの葉を食している。

シモフリスズメガの幼虫の体は、薄青色で白色の斜線が等間隔に並ぶ。なかなかおしゃれな装いである。さまざまな植物を好む。ゴマもそのひとつ。ゴマの花が咲くころにどこからともなくやってきて、柔らかい新芽を食べるので、成長が止まってしまう。つまり収穫に影響する。農家の人達からは、ゴマムシと呼ばれて困惑されている。

ムラサキシキブやネズミモチなどの庭木の根元に、コロコロと落ちた糞で幼虫の存在に気付く人も多い。その頃には、樹木の食害はかなり進んでいるだろう。

やがて蛹化して蛹になり土中で越冬する。成虫は、白色の地色に黒褐色紋のある翅をもち、胸部に黒条がある。灯火によく飛来する。

「あ~、なんか落としたよ~」
「うんちだ~」
そう、終齢幼虫の今、しっかり食して蛹になる準備中。だから排泄物も当然大きい。虫を怖がらない、嫌わないふたりの女の子の会話は、どこまでもかわいい、楽しい。小さな生きものの命を愛おしむ子どもたちに、身近な自然を大切にしてもらいたいと願う。

                          
「相生山緑地オアシスの森くらぶ」ニュースレター vol.54     2015.10.10 掲載

                                                               

              

№38  ~アオマダラタマムシ~


アオマダラタマムシ(青斑玉虫)  タマムシ科
体長  17~29㎜
分布  本州~四国~九州
食樹  アオハダ、ツゲなど


「いた!」
 コナラの木の葉の上でキラッと光る昆虫を発見して、思わず声がでた。他のメンバーに知らせると同時に、デジカメを取り出してシャッターをきる。動く、動く、あっという間に葉裏に移動し、写った姿は半分だけ。追いかけて、追いかけて撮影する。しかし出来上りは、ピンボケ・・・。久々にアオマダラタマムシに出会ったというのに、だ。

「あいつは、やたら動き回ってなかなか写真を撮らせてくれない」
観察会仲間が話していたことを思い出す。全くその通り。実感!

 アオマダラタマムシは、その名の通り体色が金属的な光沢をもつ緑色で、上翅の左右にある黄色の斑(まだら)模様が印象的な甲虫である。雌雄の見分け方は、腹端が丸いのであればメス、三角形になっているのは、オスである。幼虫は、モチノキ科の立ち枯れの樹木や枯死部を食し、成虫になるまでに2年を要するという。晩夏に羽化し、そのまま蛹室で越冬する。

発見したアオマダラタマムシの体調は22㎜、青色の雄だった。稀ではあるが、赤~紫系の体色のアオマダラタマムシが存在するという。次回は是非その美麗種に出会ってみたいものである。

                         
「相生山緑地オアシスの森くらぶ」ニュースレター vol.53     2015.7. 11 掲載



№37 ~ シジュウカラ ~

シジュウカラ(四十雀) シジュウカラ科
体長   15cm
分布   日本全国
出現期  留鳥(年中)
食餌   昆虫類、クモ類、草木の実・種子など






「ツーピーツーピー、ツツピー」
 シジュカラの声が、いつの間にかさえずりに変わっている。まだまだ風は冷たいが、野鳥の世界はすでに春、恋の季節を迎えているらしい。

シジュウカラは、スズメ程の大きさで頭部は黒。顔と胸が白い。のどから腹部にかけて黒い縦線があり、オスが太く、メスは細い。そのラインはネクタイを連想させる。シジュウカラは、「シッジュクジュク」という地鳴きが四十、カラはスズメを表すので四十雀と表記する。

 野鳥に親しむ方法のひとつは聞きなし。例えばウグイスは、「ホーホケキョ」で「法、法華経」と聞きなす。同様にホトトギスは、「特許許可局」。コジュケイは、「ちょっと来い、ちょっと来い」。恐妻家には、「かあちゃん怖い、かあちゃん怖い」と聞こえるらしい。

 ある年の観察会の時、芽吹き始めた梢でシジュカラがさえずった。「ツーピーツーピー、ツツピー」の聞きなしを参加者がそれぞれで考えるという試みを行った。さて、みなさんの耳にはどのように聞こえたのか?

「ぼくには、好っき~、好っき~と聞こえたよ」
 小学生の回答である。観察会メンバーと共にその感性のすばらしさに拍手!さえずりは、ラブソングであるから、これ以上の聞きなしは、ない。

※さえずり:繁殖期に主として小鳥類のオスが発する特徴のある良い声   で、縄張り宣言とメスを誘う機能をいう。

※地鳴き:主として秋、冬のなき声。

                        
「相生山緑地オアシスの森くらぶ」ニュースレター vol.52     2015.3.14  掲載





№36  ~ ヤマトタマムシ ~


ヤマトタマムシ(大和玉虫)  タマムシ科
体長  35~42㎜
分布  本州~九州
食樹  エノキ

「あ、おかあさんが爪につけるのといっしょみたいだ~」
観察会の最中に小学生の男の子が叫ぶようにいった。
 いったい何だろう。その男の子が拾い上げたものは、きらきらとひかり細長い形をしていた。ヤマトタマムシの翅だった。おそらく、他の生きものに食され、翅だけ残ったのだろう。それにしても、ネイルチップ(つけ爪)に見立てるとは、今どきの男の子のおしゃれの関心度の高さと、その想像力の逞しさは驚きそのものだ。

 ヤマトタマムシは本州から九州に分布する甲虫である。その翅の金属的な光沢の美しさゆえ、法隆寺所蔵の飛鳥時代を代表する国宝「玉虫の厨子」の装飾に用いられたことは著名である。
 吉兆虫ともいわれ、たんすにいれておくと、着物がふえるという言い伝えがある。また鏡台に入れておけば想い人に会えるといわれる。

 美しさ、またその縁起の良い甲虫は、意外な面がある。体をやや前倒しにして翅を広げ、縦長十文字の姿で、しかもゆっくり飛ぶ。スピード感のない飛翔は思わずつぶやいてしまう。

「なんと不器用な飛び方なのだろう」
昆虫の世界も、天は二物を与えず、か。                     
「相生山緑地オアシスの森くらぶ」ニュースレター vol.51  2014.. 掲載

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№35  ~ “ヒメボタルかるた”について ~

         環境教育グッズ


 
 
私たち自然観察会メンバーは一昨年、
参加者と共に“ヒメボタルかるた”を作成した。
以下は読み札の一部である。

 「タヌキも忍び足でヒメボタル観察」

「コオロギ,スズムシの鳴き声を子守唄に幼虫育つ」

 「エネルギーをカタツムリからもらって幼虫サナギとなり」

 「ウグイスさえずりて幼虫サナギとなる日近し」

「キョキョキョキョキョとヨタカ鳴く森にヒメボタルきらめく」

 「レース編み名人クモの『ワナ』にかかってヒメボタルの命危うし」

 どの読み札もヒメボタルを取り巻く生きものや、ヒメボタルの生活史、食べものなどを簡潔に詠ったものである。

 環境に対する取り組みを詠った札もある。

「人の手で人の心で守られ受け継がれる相生山緑地のヒメボタル」

 「入念に下見して迎えるヒメボタルの観察日」

  ヒメボタルに特別に関心を持つ人も、関心を持たない人も、ゲームを通して楽しみながら学ぶことができる。それは“かるた”ならではの特徴である。

  “ヒメボタルかるた”作成を通し、改めてさまざまな森の住人たちの存在とそのつながりに想いを馳せた。
                    

「相生山緑地オアシスの森くらぶ」ニュースレター vol.50  2014.. 掲載


№34 ~ キムネクマバチ~


キムネクマバチ(黄胸熊蜂)バチミツバチ科
体長  20mm
分布  北海道~九州 
食餌  花蜜、花粉など


 
  = ずんぐり むっくり =

  ブゥ~ン。低音ながら強い羽音が近づいてくる。身体を動かさずに目線を音の方向に向けると、クマバチがフジバカマの花冠にとまり吸蜜をはじめた。クマンバチともよばれるこのハチは、こちらがむやみに近寄ったり、刺激したりしなければ問題はない。

  身体全体が黒く胸部の毛の色が黄色いこのハチは、その体色からキムネクマバチ(黄胸熊蜂)と呼ばれる。ずんぐりむっくりの身体は、愛嬌がある。羽根は、やや小さめであるが、羽根音はブゥ~ンと大きい。そのため獰猛な生きものが近づいて来るのではないかと、不安になる。私たち人間に関心を示すことはほとんどない。ただし巣があることを知らずに近づいたり、脅かしたりすると毒針を持つメスに刺されることがある。オスは針がないため人を刺すことはない。これらの知識があれば、怖くはない。

 「ブンブン ブンブン ハチが飛ぶ ハチが飛ぶ」と、鼻歌を口ずさみたくなる。

                      
「相生山緑地オアシスの森くらぶ」ニュースレター vol.49  2014.. 掲載

 
 
 
 
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№33 ~ ベニカミキリ ~

ベニカミキリ(紅髪切)  カミキリムシ科
体長  13~18mm  
分布  北海道~九州 
食樹  幼虫:モウソウダケ、マダケなど  
     成虫:花、花粉、葉、茎など



= 紅色のカミキリムシ=

緑色と紅色の対比に思わずカメラのシャッターをきる。
前胸背板には、黒色紋が5つくっきりとある

ベニカミキリだ。
よく似ている種としてヘリグロベニカミキリがいるが、
こちらは前胸背板が黒色で縁取られているのでくべつができる。

ベニカミキリ(紅髪切)は、
その名が示すように髪の毛を切断するほど大顎の力が強いことに由来する。(噛み切り虫という説もあり)

成虫は、タケの裂け目などに産卵する。孵化した幼虫はタケをしっかり食し終齢幼虫となり、やがてサナギとなる。じっとタケの内部で冬を越し、4月に成虫になる。その間3年を要する。
成虫は、花粉や蜜を求めてクリなどの花を訪れる。
ベニカミキリを見つけた場所は、頭上にクリの木、
近くには伐採したタケが積み上げられていた。

まさにライフサイクルにふさわしいエリア・・・
だったのである。
どんな生きものの親も、
子が育つ過程がつつがないよう充分に考慮のうえ、
産卵場所を選択するものだろうか




 
 
№32  ~ 陸貝 ~
 
陸貝(陸棲貝類、陸生貝類、陸産貝類)とは、
カタツムリに代表される陸上で生活する貝である。
多様な環境に適応して形態や生態が分化している。
殻を有するものの他、ナメクジのように殻が退化した貝もいる。

 
19種の発見!

  平成24年10月、名古屋市内33地点で陸貝の一斉調査が実施された。
目的は、陸貝の種類や数を調査・記録することで、
身近な自然の現状について多数の人が関心を持つことである。


 名古屋市内全体では41種の発見があり、
最も種類が多かった場所は相生山緑地(天白区)と高座結御子 (熱田区)で共に19種。



 相生山緑地で発見されたのは、ヒメカサキビ(準絶滅危惧種)、イセノナミマイマイ、オカチョウジガイなどの在来種15種と、トクサオカチョウジガイ(東南アジア原産)などの外来種4種。外来種が多いのは、都市型生態系の特色である。

 相生山緑地自然観察会では、
実は過去2回、陸貝調査を行っている。
平成21年10月は8種類、平成23年12月は12種の陸貝を確認。
その折に、ウメムラシタラガイ、カサキビ、ヤマナメクジを確認しているので、それらを含めると合計22種となる。

  今回の調査は、前2回と比較して大変多くの陸貝が発見された。
このような成果が得られたのは参加人数の多さもさることながら、調査道具にネットを活用したことである。これによって微小な貝類の選り分けを容易にした。

  本年も6月に独自の調査を行う。さて、どんな発見があるのだろう。






№31 ~アオスジアゲハ(青条揚羽)~


アオスジアゲハ(青条揚羽) アゲハチョウ科
体長      開帳7㎝
成虫出現期  5月~10月頃(越冬態:さなぎ)
分布     本州以南~八重山
食樹     クスノキ、ヤブニッケイ、タブノキなど

  本を読んでいると、なにかがさっと横切っていった。その方向を目で追う。黒いチョウ。アオスジアゲハだ。しかし、なぜここにいるのだろう?
「ここ」というのは、地下鉄「新瑞駅」で列車に乗り、「神宮西駅」を通り過ぎたあたりのことである。いったいどの駅から「乗車」したのだろう。アオスジアゲハは、名古屋市内の公園や街中でもよく見かけるチョウである。しかし、地下鉄車内とは驚きである。

 アオスジアゲハ(青条揚羽)、その名が示すように黒色の翅に青色のひとすじの帯状模様がある。黒色の前翅と後翅にひらがなの「く」の文字を、青色の筆でのびやかに描いたようなイメージだ。
 食樹のひとつクスノキは、街路樹として植栽されていることも多く、また神社などにも多い。そのため元来の生息地である森や林はもとより、街中のチョウでもある。成虫は、ヤブガラシやイボタ、トベラなどの白い花を好んで訪れる。翅を小刻みに動かしながら吸蜜する姿や、飛び方が敏捷で飛翔力が高く、花の回りをめまぐるしく飛び回る姿は、どこか多忙な人間を想像させる。
 クスノキなどの新芽に産卵し、そのさなぎは、クスノキの葉に似ている。天敵である昆虫類や鳥類の目から逃れるために、さなぎの形を葉に似せた知恵は、驚異でもある。

 秋近し。フジバカマが開花する。アオスジアゲハが吸蜜にやってくる。黒色の翅に浮かび上がる鮮やかな青色、その対比は非常に美しく、多数の人の心に強い印象を残す。
 アオスジアゲハは、やはり緑の空間で観察したいチョウである。






№30 ~シロシタホタルガ(幼虫)~


 シロシタホタルガ(白下蛍蛾)マダラガ科
体長     2.5~3㎝
成虫出現期  6-7月と9月頃。
分布     日本全国の平地から山地
食樹     サワフタギ



 「わ~、すごい!カラフルな虫がいるよ~」

 「ほんと! かわいいね~」

 葉の上の幼虫を発見した観察会参加者の会話である。

幼虫は、全体が黒色で背面にはクリーム色の紋がふたつずつ、側面には赤い隆起が並ぶ。また背面と側面の中間には、小さくて丸い空色の点がある。自然界の配色の妙に感嘆だ。

シロシタホタルガの幼虫は、その色目のかわいらしさから、思わず触れたくなる。しかし幼虫の体液には毒性があるので、うっかり触れようものならば皮膚炎を起こしてしまうことがあるので要注意。


サワフタギの葉上に、幼虫が観察できたのは、その葉がシロシタホタルガの好物であるからだ。柔らかな黄緑色の葉は、いかにも美味なる色。勢いよく食事をしているのが理解できる。

 やがて幼虫は葉を巻いてサナギとなり、6~7月頃には成虫となる。ガは夜間に活動するものが多い。しかしシロシタホタルガは昼間に活動にひらひらと飛ぶのがよく観察される。

 名前の由来は、全身が黒くて頭部だけが赤い体色がホタルを連想せるためである。シロシタホタルガ(白下蛍蛾)のシロシタは、成虫の後翅の基半後が白色であることによる。

幼虫は、大半の女性にとって逃げ出したくなるものである。しかしシロシタホタルガは、その色目から「ブローチにしたい」という声が多い。かわいらしさは、苦手意識を超越する!?





№29 ~ジョウビタキ~

ジョウビタキ(尉鶲・常鶲)ツグミ科

体長   14cm

分布   日本全国の平地から山地に飛来

出現期  冬鳥

食餌   昆虫類、クモ類、草木の実・種子など          


 
 ~ 礼服姿の野鳥 ~

 「ヒッ ヒッ ヒッ」

 陽だまりで冬緑植物の写真撮影をしていると、甲高い声が聞こえてきた。その方向に目を向けると、すっかり木の葉を落とした低木の枝先に鳥がいた。頭部は灰白色、腹部は赤褐色、黒い羽根に白斑が目立つ。

しきりに頭を下げ、尾羽をプルプルとふる。まるでお辞儀をしているような特徴があるジョウビタキだ。

  ジョウビタキのジョウ(尉)は、銀髪を意味する。オスは頭部が灰白色のため、その色を銀色にたとえられるのが、その理由である。メスは、全体が灰褐色で腹部はオスに比べて赤褐色が薄い色目である。メスの翼にも白斑が目立つ。 

鳴き声が、火打石を打ち合わせる音に似ていることから、「火焚き」= ヒタキの名がついたといわれる。オス・メスともに翼の中程に白斑が目立ち、その白斑を紋付の着物に見立てて「紋付鳥」といわれる。

 「きょうは、ちょっと冷え込んだな~。いよいよ秋も深まってきた」

そんな10月のある日、
決まってジョウビタキが北国からやってくる。

 「ずいぶん暖かくなってきたな~」
そんな日々が続くと、いよいよジョウビタキの姿が見えなくなる。
 ジョウビタキは、冬鳥の代表格なのである。

※灰色や白色系は銀色に、
    黄色系は金色や黄金色に例えられる





 



№28  ~アヅチグモ~ 
アヅチグモ(安土蜘蛛) カニグモ科
体長   メス6~8mm  オス2~3mm
分布   本州、四国、九州
出現期  6~10月
食餌   チョウ、ハチなど

 

ブルー・シートの上で白色の個体がすばやく動いた。
速い、速い。
「何、何なの~」
メンバーから驚きの声があがる。

私たち3人の目が、その動きを懸命に追いかける。
「クモだ~」
「真っ白なクモだよ。結構きれい!」
アヅチグモ(安土蜘蛛)だった。

クモは苦手という人が多い。
しかし、身体が「白」であることが、抵抗感をなくしたようだ。

アヅチグモは、人里周辺で観察される。

草木の上でチョウやハチなどの飛来する昆虫を待機し、
自身の身体より大きな獲物も捕獲する。

この日私たちが出会ったクモは、
7mm程の大きさの白色、つまりメスである。
個体差が大きく黄色い個体も観察される。

オスの体長は2~3mmと小さい。しかも褐色である。
なかなか同一種とは思えない。(性的二形が顕著である。)

フィールド調査をしていると、

調査対象物でないものとも
また好き嫌いも関係なく出会いが多々ある。
この思いがけない出会いは、楽しみのひとつである。

さて、次はどんな生きもの、
いや森の住人との出会いがあるのだろう。

※アヅチグモの名の由来に関心があるのだが、

  現在のところ不明である。

 



 



№27 アワフキムシ アワフキムシ
体長 10mm前後(幼虫の種類による)
分布 全国に分布 






ホタルは泡から生まれる!?


「ホタルはあの泡から生まれるのね」
自然観察会の参加者のひとりが指差す方向を見ると、

アカマツの新梢に泡状のものがついていた。

 「ええっ~、本当?」

 別の参加者は半信半疑。

 自然観察会では、

その場でしかも自らの目で確認することができる。

小枝でそっと泡をかき分けると、1cm程の昆虫が現われた。
頭部、胸部の約3分の2が黒く、その下の腹部は橙色。
もちろん参加者の常連さんのなかには、
それが何であるかをすでに知っている人もいる。
しかし、そこは初参加の人に譲歩し、
私たち自然観察指導員と一緒に成り行きを見守っている。

 「ちょっと違うんじゃない」

「ホタルは頭の方が赤くて、後は全体的に黒いわよ」

初参加の何人かが、目前の対象物の感想をそれぞれ口にする。

実はこの泡状のものは、

アワフキムシ科の「マツアワフキ」の幼虫が潜んでいる。
幼虫は排泄物を泡立てた巣のなかで、
アカマツの木の汁を吸って成長する。
成虫は茶色っぽい体で、
マツの根元などで見つかることが多い。

泡状の白色は結構目につく上に、
奇妙であるために関心を持つ人が多い。
古くから、この泡のなかからホタルが生まれると信じられてきた。
昆虫が黒っぽい体をしているためにホタルを連想させるようだ。



このアワフキムシの泡は、

地方によってはヘビのツバといわれている。

また南フランスでは、
この泡をカッコウ(野鳥)のツバであるといっている。
その地域差がおもしろい。
※アワフキムシの種類は複数あり、
  ヨモギ、クワなどさまざまな植物で観察できる。




26 ~  オオカマキリ(大蟷螂)その2 卵鞘 ~ 

大きさ 35mm前後
 分布  北海道、本州、四国、九州に分布 





 
 
 
 
 
 





=ただいまカプセルのなか=



「まるでソフトクリームのよう・・・」
オオカマキリが産卵する場に偶然立ち会って思った。
頭部を下にしてジュズダマの茎に、
産卵管から淡いクリーム色の泡状物質をだす。

ゆっくり、ゆっくり、
円を描くようにふわふわの気泡が搾り出される。やがておなじみの変形おにぎり状の卵になった。
サイズは35mm前後だろうか。
時計を見ると3時間程経過していた。
オオカマキリの卵は、冬枯れの景色に馴染む薄茶色である。
植物の茎に産卵することが多いオオカマキリの
「カモフラージュ作戦」なのであろう。

スポンジ構造は、防寒・断熱効果があり、
外気温度の変化に左右されない構造になっている。
防寒に優れ、雨や雪にも耐えて一冬を越すためのものである。
観察会では参加者が、
お吸い物などの具財の焼麩に似ているとか、
いやいやウエハースに似ているとにぎやかな会話になる。

カプセルには多数の卵がぎっしり並んで、
誕生する日を待っている。
ただし幸運に冬を越すことができればの話である。
強敵はいつでも、どこにでもいる。
たとえば
カマキリの卵を食べるカマキリカツオブシムシという甲虫がいる。
あるいは、シジュウカラなどの野鳥が狙う。
それぞれが生きるために必死で食べ物を探す。

オオカマキリの産卵を観察していて、
オーダーしたソフトクリームを待つ気持ちに
どこか似ていると思った。

今は、ただただ多数の赤ちゃんが無事誕生することを祈る。
明るい陽射しのなかで誕生するその数、約200~300個体。
さて、ここから成虫になる個体数は、いくつなのだろう。